辺りを(うかが)っていると、マクガレン夫人が私に駆け寄ってきた。

「ビクトリアさん、あなたも呼ばれたのね」

「はい、急に屋敷に招待状が届いて。戦勝記念パーティって、こんなに急に開催されるものなんですか?」

「こんなの前代未聞よ。なんでも、このサプライズ開催はオスカー殿下が国王陛下に頼みこんだらしいわ。パーティなんか開く前に、騎士を家族の元へ帰らせるのが先でしょうに」

 一体、あの方は何を考えているのかしら……と夫人が呟く。

「静粛に!」と宮廷役人の声が響いた。直後、広間の奥にある扉から国王陛下と王妃殿下が姿を現わす。

 二人が玉座に座ったあと、宮廷楽団の奏でる荘厳な曲にあわせて、正面扉から騎士が入場してきた。

 先頭はやはりオスカー、その次にマクガレン。
 第一騎士団の中に、やはりアシュレイの姿はなかった。

 私の動揺と不安をよそに、式典はつつがなく進んでいく。
 
 国王陛下のお言葉、総指揮官オスカーの報告、そして目覚ましい功績を挙げた騎士への勲章授与。

 最も栄誉ある勲章を与えられたのは――オスカーだった。

 オスカーが陛下の御前に立ったその時、誰かが「お待ち下さい」という制止の声をあげた。