「敵艦の大半は沈没しましたが、数隻、こちらへ向かって来ています。我々は崖上に陣を築き、登って上陸しようとしてくる敵兵を一掃。背後にある街を守り抜くのが使命です」

「分かった。僕も掃討作戦に参加する。手柄もなく王宮に戻れば、兄上に嫌味を言われるからな。――ロジャース。話がある、付いてこい」
 
 オスカーに呼びかけられた親衛隊の男は、どこか緊張した面もちで頷き、共に第二王子専用の幕舎へ消えていく。

 ほどなくして、不気味なほほ笑みを浮かべたオスカーと、顔面蒼白のロジャースが戻ってきた。

 一体、この二人は何の話し合いをしていたのか。
 嫌な予感に胸がざわつく。
 
 だが問いただす間もなく、オスカーは自身の専属近衛兵――通称『親衛隊』の面々に出陣を命じた。

 危険な前線に王子と親衛隊だけで向かわせる訳にはいかない。
 オスカーが不審な行動をしているのなら、尚更自分が見張っていなければ。

 アシュレイは指揮をジェイクに一任し、オスカーと共に出撃した。

 
 消化試合的な掃討作戦とはいえ、断崖絶壁の前線では激しい戦闘が繰り広げられていた。

 崖をよじ登り襲い来る敵兵。
 敵味方入り乱れる混沌とした戦場。
 
 無数の叫びと怒号が飛び交い、辺りはむせかえるほどの血と硝煙の匂いに包まれている。