いつもアシュレイに注意されていることを、お返しだと言わんばかりに吹き込むイアン。

 だが、ビクトリアにやんわりツッコまれて、ぐうの音も出ない様子で唸った。

 賑やかな二人の会話に、自然と口元がゆるむ。

『とっ、とにかく! 屋敷とビッキーのことは僕が守るから安心してね! 元気で帰ってくるのを待ってるよ』

 イアンの声が遠ざかり、話し手がビクトリアに変わった。

『私もイアン様も、あなたの無事を信じて待っています。――愛しているわ、アシュレイ様』

 ザザッという僅かなノイズのあと、音声が終了した。
 
 アシュレイは目を閉じてしばらく心地よい余韻に浸った。

 生前フレッドが『どんなに落ち込んでいても家族の声を聞くと元気になれる』と言っていたが、アイツもこんな心境だったのだな……と、身をもって実感した。

 
 ――何としてでも、帰らなければ。愛する妻と息子の元へ。