「お前らも自分の天幕に戻って少し休憩してこい。一時間後に再集合だ」

 解散の号令と同時に、人々が天幕から出て行く。
 
 アシュレイも自分のテントに戻り、椅子に座ってため息をついた。

 
 控えめに言って、状況は最悪だ。

 明日の未明には敵戦艦が攻めてくるというのに、民の避難は終わらず、作戦立案も難航している。

 さらには指揮官(オスカー)への不信感で、騎士の士気も低い。

 せめて敵船を駆逐する有効な手立てが見つかれば、士気もあがるのだが……。

(気分転換しよう)

 アシュレイはポケットに入れていた桃色クマ人形を取り出した。背中にある『1』の再生ボタンを押す。

 すると、すぐさまイアンの元気な声が聞こえてきた。

『ビッキー、これちゃんと録音できてるのかなー?』

『ランプが点滅してるから、ちゃんと()れているはずですよ』

『そっか! あーあー。こほん。こちら家で待機してるイアンとビッキーです! アシュレイ、怪我とかしてない? 風邪ひいてない? ちゃんと食べて寝るんですよ! あと夜更かししちゃ駄目だからね!』

『夜更かしするのは、主にイアン様じゃないですか?』

『ぐうぅ』