「なんなんだ、あの王子は!」
「王族の風上にも置けないな」
「あれが指揮官で、本当に勝てるのか?」

 怒りと呆れで騎士達が一斉に騒ぎ出す。

 近付いてきたマクガレンが、アシュレイの肩を叩いた。

「すみません。堪えきれず言ってしまいました」

「いや、お前が言わなかったら、俺が一発ぶん殴っていた。お前に憎まれ役を押しつけちまって、悪かったな」

「殴るのはまずいですよ。今ここでマクガレン隊長がいなくなったら、俺たちは無能な指揮官の下で無駄死にすることになる。生きて勝つためなら憎まれ役の一つや二つ、喜んで引き受けます」

「ったく。そういう正義感の強いところはフレッドそっくりだな。まさに類は友を呼ぶだ」

「そんなに似ているでしょうか?」

「似てるよ。そっくりだ。だから心配になる。お前は死んでくれるなよ、アシュレイ」

 口調は軽かったが、マクガレンの目は本気だった。

「もちろん。死ぬつもりなんてありません。家族が待っていますから」

「だな。さっさと終わらせて、俺もお前も、家に帰らにゃいかんなぁ。それじゃ、俺はふて腐れ王子のご機嫌取りに行きますかね」

 マクガレンはもう一度アシュレイの肩を叩くと、周囲を見渡して言った。