「殿下、武勲より国民のことを最優先にお考え下さい。付近には逃げ遅れている者がいます。さらに街を破壊され家を失えば、多くの民が路頭に迷う。勝つだけでは駄目なのです」

 
 戦いのあとの未来をお考え下さいと、アシュレイはまっすぐオスカーを見すえて告げた。

 周囲の騎士達もみな同調するように頷く。

 だが、アシュレイの切実な進言も、オスカーには届かなかった。
 
「うるさい! 大義を成すためには犠牲はつきものだ。逃げ遅れているのは、どうせ孤児か、病気の役立たずか、老人だろう? そんな生産性のない輩など守るに値しない!」

 あまりに冷酷かつ倫理観のない言葉に、騎士達が鋭い視線を王子に向ける。

「なっ、なんだ。何か言いたいことがあるのか!? まったく! 気分が悪い、外の空気を吸ってくる!」

 さすがに分が悪いと思ったのか、オスカーは逃げるように天幕を出て行った。