「それは賛成できかねます」と、アシュレイは首を横に振った。
 
「敵軍を上陸させれば、街は破壊され民を戦闘に巻き込んでしまう恐れがあります。誘導班の報告によると、病人や高齢者、孤児院の子どもなどの避難が遅れている様子。なるべく多くの敵艦隊を沈め、上陸を防ぐ方向で進めたいものです」

 マクガレンを筆頭に、各隊の騎士団長たちが「そうだな」と頷く。
 
 この戦いは勝てば良いという訳ではない。国民の命や住み慣れた家や街を、いかに守り抜くかが大事だ。

 それを分かっている騎士達は、性能の優れた敵船をいかに効率よく、最小限の被害で沈めるかの議論に移り始めた。

 その時、今まで沈黙を貫いていたあの男が、やけに強い口調で言い放った。

 
「僕は、アシュレイ・クラークの意見に反対だ!」

 
 賑やかだった天幕の中が、一気にしんと静まり返る。

 
 ……何を言っているんだ、こいつは。

 
 あまりにも静か過ぎて、そんな騎士達の心の声が聞こえるようだった。

 若干一名、空気を読まない王子に向かって、マクガレンが恭しく尋ねる。

「理由をお伺いしてもよろしいですか、殿下」