南部の港町に着くと、地元騎士の誘導で市民の避難が行われていた。

 海を一望できる場所に設置された野営地。最も大きな天幕に騎士団幹部が終結し、作戦会議が開かれた。
 
 テーブルの上に広げられた地図と海図を見おろし、騎士達の白熱した議論が展開される。
 
 戦は刃を交える前の作戦立案で勝負が決まる。

 それほど大事な会議で、唯一、話についていけていない男がいた。
 ――オスカーだ。

 意見を求められても『あ、ああ……それで良い』と同調するだけで、自ら策を提示することはない。そもそも状況を把握しているのかも怪しいものだ。
 
 相手は曲がりなりにも王子ゆえ、誰も表だって非難しないが、その場にいる騎士は全員『おいおい、こいつ大丈夫かよ』と呆れ果てていた。

 
「偵察船の報告によると、敵船は少なく見積もって六隻。海霧(かいむ)が酷く遠くまで見通せなかったため、実際はさらに多いと思われる。さらに敵船は巨大戦艦で高性能、攻守共に我が国より優れているようだ」

「さすがは海洋国家。海上で真正面から戦うのは分が悪いな。あえて上陸させ、地上戦に持ち込むか?」