「ルイス殿下は、王妃様とオスカー殿下をことごとく嫌ってますからねー。まぁ、長年自分を虐げてきた継母と、ろくに公務もせずに甘い汁ばかり吸う異母弟。恨みはすれど、愛するのは無理な話っすね」

 ジェイクの言うとおり、第一王子がまっさきに着手したのは、オスカーの能力不足と不祥事を追求し、王族の地位を剥奪しようと根回しすることだった。

 今のオスカーの状況を一言で表すなら、まさに崖っぷち。

 何とか手柄を上げて無能の汚名を返上し、王族の地位にしがみつきたいと考えているに違いない。

 さらに、あの野心家な男のことだ。あわよくば兄より優秀だと国中に知らしめ、王位を狙うことも視野にいれているかもしれない。

「なんにせよ、気を引き締めて任務に当たるぞ」

「了解っす、隊長」
 
 司令官が無能だと、勝てる戦も勝てなくなる。今まさに我が軍は身内に爆弾を抱えているようなものだ。

(厄介なことにならないと良いが)

 胸騒ぎを覚えたアシュレイは、軽く頭を振って思考を切り替えた。
 だが、その悪い予感は見事に的中してしまうのだった――。