冗談で言っているのかと思いきや、アシュレイは真剣な顔をしていた。
 
「俺は、君が思っている以上に独占欲が強いんだ」
 
 サイドテーブルに置かれた燭台の明かりが揺らめく。

 薄暗い部屋で、蝋燭(ろうそく)の灯りに照らされたアシュレイの眼差しは熱っぽく、表情はセクシーだった。
 
「自分の中にこんな激しい感情があるなんて、君に出会うまで自分でも気付かなかった。――愛してる、ビクトリア」

「ええ、私も。愛してるわ」

 大きな掌が私の頬に触れる。長い指がゆっくりと唇をなぞり、私は思わず吐息をこぼした。

「君を愛する男は、この世で俺ひとりだ。他の誰にも触れさせないで」

「うん。だから……早く帰ってきてね」

「約束する」

 そう呟いたアシュレイは立ち上がりジャケットを脱いで、燭台の明かりをふっと吹き消した。
 
 
 部屋が静寂と暗闇に満たされる。
 窓から差し込む月明かりに、折り重なる二人の姿が浮かび上がった。