教会を出てアシュレイの部屋に戻る頃には、すっかり夜も深まっていた。
 
 ベッドに並んで座り、アシュレイに肩を抱かれ寄り添う。
 
 ぽつりぽつりと言葉を交わし笑い合う、穏やかで心地よい時間が流れた。
 
 任務のためにも早く休んだ方が良いわ――と言いかけて、私は口をつぐんだ。
 言えば、この時間が終わってしまう。

 身勝手だとは思うけれど、もう少しだけ、あと数分だけ、こうしていたい。
 
 ふいに私の薬指をアシュレイが撫で「指輪」と呟いた。
 
「俺が帰ってきたら、イアンと三人で結婚指輪を買いに行こう」

「ドレスを選んだ時みたいに、二人で喧嘩しないでね」

「約束は出来ないな。俺とイアンは趣味が違いすぎるから」

「この前みたいに一時間以上もかかるのは困るわ。あなたが譲歩してあげて」

「それは無理な相談だ。だって、君は俺の妻だろう。他の男には決めさせない」

「男って……七歳児と張り合うなんて」