嵐のように走り去った少年の背中を見送り、私たちは顔を見合わせる。

「……とりあえず、成功かしら?」

「大成功だよ。君のおかげで、イアンは幸せな夢を見られた。ありがとう」

「こちらこそ。あなたの協力がなければ出来なかったことですもの。二人で掴んだ大成功ね」

「勝利の乾杯でもしようか?」

「賛成!」

 アシュレイが立ち上がり、戸棚からグラスとワインのボトルを持って戻ってきた。コルクを抜くと、ふわりと葡萄の芳醇な香りが立ちのぼる。

 思わずうっとり目を細める私に、アシュレイがワインを注ぎながら言った。

「君の誕生日には、良いお酒をプレゼントするよ」

「ひとを酒豪みたいに言わないで。私、お酒はたしなむ程度なので」

「そう? じゃあ、君の分は少なくしておこうか」

「そんなぁ~! 意地悪しないで下さい!」

 私は、量が多い方のグラスをちゃっかり手に取った。
 
 それを見てアシュレイがくすりとほほ笑む。

「では、イアンの誕生日と作戦成功を祝して――乾杯!」

 グラスを重ねると、コンと良い音が鳴った。

 互いにワインに口をつけた所で、イアンが部屋に戻ってきた。

「あー、お酒また飲んでる。まったく、大人はさぁ、お祝いにかこつけて、すーぐ飲むんだから」