ピーッという終わりの合図を聞いた瞬間、イアンの目から大粒の雫がこぼれ落ちた。

 小さな体を、私とアシュレイが両方から抱きしめる。
 
 私たちはしばらく、セットのクマ人形のように、三人で寄り添い合っていた。

「イアン様、実はですね――」

 私がそっと声をかけると、イアンがごしごしと目を擦って顔をあげた。

 その瞳にはもう悲しみの気配はなく、少しだけ大人びた表情をしていた。

「ビッキー、分かってるよ。アシュレイと毎日練習してたでしょ?」

「気付いていたんですか」

「ふふん。この屋敷の中で僕の知らないことはないよ! あのね、僕にはアシュレイとビッキーがいる。だから、三人で居れば寂しくない!」

 イアンは右手で私の手を、左手でアシュレイの手を握り、輝くような笑顔を私達に見せてくれる。

「あっ、作文! いいこと思いついた!」

 イアンはハッとした顔をすると、白いクマ人形を持って椅子から降りた。
 
 水色クマをアシュレイの膝に、桃色クマを私の膝にそれぞれ置いて、満足げに頷く。

「はい、これ二人のクマさんね。忘れないうちに作文書かなきゃ! 勉強部屋、行ってくる!」

 イアンは「プレゼント、ありがと!」と明るく言って、元気いっぱいに部屋を出て行った。