クマ人形に向かってイアンがちょっと恥ずかしそうに「キャシーっていうんだ」と答える。
 
 流れてくる音声は、私がジェナの声を真似て吹き込んだもの。

 ジェナが生前イアンに言っていたこと、生きていたら伝えたかったであろう事柄をアシュレイとともに考え、口調や声音を練習して録音した。

 偽物のメッセージでイアンを騙すことに、後ろめたさはあった。
 
 だが、たとえ吹き込まれた音声がジェナのものじゃなくても、プレゼントに込められた想いは本物だ。

 イアンに喜んで欲しい。束の間の夢を見させてあげたい。
 
 祈るような気持ちで、私とアシュレイは目の前の光景を眺め続けた。
 
 
『側に居られなくてごめんね。でも、どんなに離れていても、ママはイアンをずっと見守っているから、安心してね』

「うん……うん……」

 イアンは瞳に涙をいっぱい溜め、泣くのを堪えながら何度も頷いた。
 
『イアンはママの宝物。愛してるわ。ママは、あなたの幸せを心から祈ってる。ハッピーバースデー、イアン!』

 その一言を最後に、明るい余韻を残して音声は終了した。