超絶キュートなイアンが、モフモフのクマ人形を持っている。
 眼前の可愛らしい光景に、私は「かわいいっ……」と呻き、きゅんとする胸を押えた。

 隣を見ると、アシュレイも目尻を下げて微笑んでいる。

「あ、しまった。写真機をダイニングに置いてきてしまった……」

「それは大失敗ですわ。シャッターチャンスだったのに」

「一生の不覚だよ」

 親馬鹿を発動している大人二人を軽くスルーして、イアンがクマ人形の背中にある再生ボタンを見た。
 
 私が録音機に音声を吹き込む仕事をしている関係で、イアンも使い方を熟知している。

 ボタンが赤く点滅しているのを見て、何かメッセージが記録されていると分かったのだろう。「押してもいい?」と尋ねてきた。

 私は内心緊張しながら、笑顔で「どうぞ」とうなずいた。

 イアンを真ん中にして三人でソファに腰掛ける。

 ワクワク顔のイアンが「なんだろな」と言いながら、一番の再生ボタンを押した。
 
 ザザッというノイズのあと、すぐさま優しい女性の声が流れた――。


『イアン、お誕生日おめでとう』
 
 
 音声を聞いた瞬間、イアンが「……ママ?」と囁く。

 
『学校は楽しい? お友達はたくさん出来たかしら? もしかしたら、好きな女の子がいるのかな?』

「うん。好きな子、できたよ」