手渡されたのは手の平サイズのクマ人形型、魔道録音機だった。それも一体ではなく三体。水色、桃色、白、三色のクマさんファミリーだ。

「可愛いですね」

「だろう? うちの新商品。最近、親子連れのお客さんが多いから、セット販売もしようと思ってさ」

 うっかり発注ミスをしちゃう天然な店主だけど、商売としての嗅覚は人一倍鋭い。客層に合わせてさっそく新商品を入荷するとはやり手だ。
 
 クマ人形は毛がふわふわで手触りが良く、上質な素材で出来た逸品だとすぐに分かる。

 店頭販売すればかなりの値段がつくだろう。こんな高価なものを、三体も無料で貰って良いのだろうか。

「頂いてもよろしいんですか?」

「構わんよ。メッセージを吹き込んでプレゼントしてやんな」

「ありがとうございます」

 お礼を言って、私は魔道具店を後にした。屋敷に戻ると既にイアンは帰宅していた。

 リビングの扉を開くと同時に、満面の笑顔を浮かべた少年が子犬のように駆けてくる。

「ビッキー、見て見て! 理科のテストで満点を取ったんだ!」

「凄い! 毎日、がんばって勉強していた成果ですね」

「んふふ~。僕、ご褒美ほしいなぁ。前に作ってくれたパンケーキ、食べたいなぁ〜」