「いやぁ。ビクトリアさんのおかげで、うちの店は命拾いしたよ。本当にありがとう」

「お役に立てて良かったです。これ、今回の納品分です」

 自宅で吹き込んだ魔道具を渡すと、確かに受け取りましたよ、と店主が頷いた。

「それにしても、ビクトリアさんは凄いよね。聞き取りやすい発音に、抑揚も完璧。声色まで変えられるんだから。いやはや、驚きだよ。劇団の仕事とかやってたの?」

「いえ、やってないですよ」

 ……今世では。
 
 私の返答に、店主がますます感心した様子を見せる。

「じゃあ、天性の才能ってやつだ! アシュレイ君も凄いお嫁さんをもらったもんだ」

「あの……まだ、お嫁さんではなく……」

 訂正しようにも、店主は「良かった良かった」と笑顔で頷くばかり。
 良い方なのだが、たまに人の話を聞かないのが、この店主の少々困った所だ。
 
 私は肩をすくめ苦笑いを浮かべた。

「そろそろイアン様が帰ってくる時間なので、私、行きますね」

「あっ、ビクトリアさん、ちょっと待ってくれ。イアン坊ちゃんの誕生日が近いだろう? これ、持って行ってよ。魔道録音機の新作だ」