魔道録音機として売れないのなら、前世でいうところのオーディオブック的な物にして売り出すのはどうかと思ったのだ。

 そりゃあ、面白そうな案だな――! と店主が手を打った。

「新しい物好きな貴族は飛びつくぞ。……あぁ~、だが……誰が音声を吹き込むんだ?」

 俺は無理だぞと店主が首を横に振り、アシュレイに視線を送る。
 アシュレイもまた、俺も得意じゃないので……と目をそらす。

 最終的に、男性二人がすがるような眼差しを向けた相手は――私だった。
 
「分かりました……。発案人なので、やってみます」

 ――という経緯で、まずは人気童話を録音して販売したところ、貴族の子供たちの間で大流行。
 
 瞬く間にクチコミが広がり、まるで本を買うように音声入り魔道具が飛ぶように売れた。
 
 今では録音して欲しい本を指定して購入する『オリジナル魔道具』が予約待ちの状態となり、私以外にもナレーターを雇うほどの大盛況となった。
 
 こんな所で前世の経験が役に立つなんて、と自分でもびっくりだ。