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お互い集中していて

部屋の中には秒針の動く音とペンの擦れる音だけ、静かに鳴り響いている。


しばらく勉強していると数学のある問題でつまずいた。


何度解き直しても解答が合わなくてうーんと首を傾げ、手が止まっていると


「どっか分からない?」


理斗が自分の手を止めて聞いてくれた。



「あ、うん。数学なんだけど…ここの応用問題が何度やっても計算合わなくて……」



テキストを見せようとしたら理斗が急に立ち上がり


私の隣に座るとなぜかテキストではなく私を見ながら言う。



「どの問題?」

「ッ、え、えーっと、これなんだけど…」



指し示す問題を横から覗き込むように彼が近づいてきたので

肩と肩が触れ合いそうなほど近距離になり、今まで気にならなかったことが気になり出す。



……手、大きいな〜。男の人の手って感じはあるのにスラッと細長くて綺麗な手だな…私手フェチだっけ?


……ていうか、さっきフワってした匂い柔軟剤…香水かな?なんか柑橘系ですごくいい匂いだったんだけど。



と心中問題を解く所ではないほど一気に緊張が戻ってきてしまった私を、彼は特に気にした様子もなく…