「ああ、わかったよ。でも必ず俺に相談してからやるんだ。ひとりで決めて突っ走るな。いいね」

 黎が彼女を抱き寄せたのを見て、目の前の夫婦は恥ずかしそうに顔を赤らめた。

 その翌日。夜に部屋へ入ってきた二人を見て黎の父は驚いた。黎が優しい笑顔で彼女の肩を抱き寄せ、寄り添って入ってくる。緊張している娘に耳元で何か囁き、それに顔を赤くして何事か話す彼女をまた優しく見つめている。入ってきたときから、自分は当てられっぱなしの状況に、見たことのない黎の姿と表情も合わせて、翻弄させられた。

 「父さん。彼女を紹介します。栗原百合さんです」

 「ああ」

 「……初めまして。栗原百合と申します。色々ご迷惑をおかけしたようで申し訳ございません」

 百合は深く頭を下げた。