「お前の家も同じだ。おそらく、お前の親父さんは決して百合との交際を許さないだろう。いくらごまかしてもいずれわかる。大臣には正妻がいて子供いる。正妻に連なる者達が彼女を許すはずがないんだ。もし、どうしても百合を選挙に使いたいなら、父親であることを隠してビジネスとしてならあり得るが、百合は逆に大臣を支持していると思われるリスクもある」

 「……わかった。俺を信用して話してくれたことに感謝する。百合には俺に話したことを黙っていてくれないか」

 神楽はうなずいた。

 「堂本。百合は自分の家族のことでも辛い思いを現在もしている。お前の家族にも攻撃されたらどれほど傷つくか。彼女もわかっているはずなのに、お前に堕ちたんだな。深入りする前にうまく手を引いてくれ。俺なら彼女を守ってやれる。だからこそ告白したんだ」

 神楽の真剣な目を黎はそらすことができなかった。言っていることはわかる。だが、できない。百合を手放すなんて、無理だ。黎は目をつぶると息を吐き、神楽を見た。

 神楽はその黎の目を見て驚いた。決意の目だった。