「ニカさん!今までどちらに…っ!!!」

家に着くと、双葉さんが慌てた様子で私の元へ駆け寄ってきて安堵の表情をする。
周りにいるお手伝いさんも安心した様子。

そうしたのもつかの間、聞き覚えのある低い声が私の耳に届いた。


「ニカ、どこに行っていたんだ」


後ろを振り向くと、お父様がいた。
私はバッグの紐を持っていた手の力を強くする。
一言も発さない私に呆れた様子を見せる。

きっと1年前の私だったら、お父様の顔色を伺い、上機嫌に振舞っていただろう。


「今日はスビンと帰ってくると、伝えてあったはずなのだが、お前は何をしているんだ!!」

お父様の迫力のある大声に、お手伝いさん達も引き気味だ。
だけど、私は動じない。

確かに今日私のやったことは、かなり馬鹿げた行動だとは思うけど、そうするしかナナミと一緒にいることが出来なかった。


「黙ったままで、はぁ……お前は何を考えているのか…」

「やめましょう、お父様。」

タイミングを見計らったかのように、客間からスビンが出てくる。
あの作り笑い、腹立たしい。


私は聞いたこと、あるんだから。
スビンがお父様の会社を継ぎたくないってこと。
あの人も親の言いなりなのね、と少し同情もしたりした。