「先生、私の席あの子の前?」
「そうですよ」

「やったぁー!」


嬉しそうに私の目の前の空いている席に、彼女は座る。
そして、後ろを振り返る。


「よろしくね!」


にっこりと無邪気な笑顔を私に見せる。

私はその笑顔よりも耳に入ってくる、そちらの方に意識がいってしまう。



「須藤さんと知り合いなの?」
「あの子も頭お花畑なの?」
「だったらやべぇだろ、きも」


今からここから消え去りたい。

私は目線を下に落とす。


やめて……




「今日お花見てきたから、私もお花畑の人になったよー!」

志崎さんは変わらぬ笑顔でクラスの子達の方を向いて、そう言った。

いや、言ってくれたんだ。


きっと。


「志崎さん、面白い!」
「転校生良いキャラだな」


生徒たちの態度が変わる。
志崎さんへの味方が180度変わった。

すごい。

私が何も出来なかったこの1年を、彼女は一瞬で違う世界へと変えた。


「朝この子と会って、ここまで一緒に来たんだよ、ねー!」

私の方を向いてそういうので、続くように私も首を縦に振る。



この子は何か違う感じがした。


「あなたな名前は?」