ドアを開けようとする手に力が入らない。
足がすくむ。

(入りたくない…)


「邪魔なんだけど。」
「失礼いたしました。」

私の隣を身長の高い男子生徒が通り過ぎる。
その生徒も同じクラスのようで、私が開けられないでいたドアを開け、教室の中に入る。

その開けっ放しの入口を後に続くかのように、ゆっくりと足を進め教室の中に入る。



私は教室が怖い。



自分の席を見つけ、着席する。
ワイヤレスイヤホンを取り出し、音楽を流す。
ありとあらゆる音をシャットアウトする。

授業中以外はこうしていないと学校にいられない。

こんな感じなんて父と母は知らない。


最後の私のわがままなんだから。




担任の先生が教室へと入ってくる。
私はイヤホンを外す。

去年と同じ担任の先生だった。
可もなく不可もなくといったところだ。
別に先生が誰であろうと私の高校生活に変わりはない。

窓の外を眺める。

私もあの鳥みたいに自由になりたいな…





「志崎 奈々美です!」



聞き覚えのある声。

ううん。さっきの声だ。



私は教室の前方に視線を向ける。



そこには朝、一緒にここまで歩いてきた黒髪の彼女がいた。

彼女と目が合った。