ナナミの耳元で小さな声で言うと、ナナミは少し顔が赤くなっていた。

「後で覚えとけ!」

たまにこうでもしておかないと、付き合ってるのかよく分からなくなりますから。
それに、ナナミの違う一面がしれたような気がして少し楽しい。

ナナミは意外と照れ屋さんであった。






「ニカさん、今日は何だか楽しそうですね。」

いちばん古くから私の家でお手伝いをしてくれている、双葉さんが私に話しかけてくる。
ここのお手伝いさんは、もちろん両親のことを知っている。
どんな人であるか分かっているからこそ、下手に私には話しかけてこない。

でも双葉さんは違う。

かなりぐいぐいと私との間合いを詰めてくる。

「双葉さんが、復帰してくれたからでしょうか」

実は腰を悪くして、少しばかり休んでいた。
高2になってからはずっと会っていなかったから、私の変化にも流石に気づいたようだった。


「今まで、そんなに楽しそうな顔はしておりませんでしたので、気になってしまいました。」

「そう、見えるのですね。良かったです。」

「学校で何かありましたか?」


「まだ言わないでおくわ。」


この気持ちの高ぶりは、今は私だけのものにしておくことにした。

まだ始まってもいない夏休みの予定を想像し、1人勝手に嬉しくなってしまった。