「ニカは、さ、」

ナナミは席を立つと、私の隣の椅子に座り、私の顎を人差し指で支え、自分の方へと向けた。


「私を、裏切ったり、しないよね?」


悲しい目、

その言葉の真意は、何なのか


「ナナミを裏切ったりなんかしないよ」

「良かった。」


視界が暗くなる。

何が起こったか分からない。


唇に柔らかい感触がある。
少し暖かくて、
さっき食べたばかりのショートケーキの甘い香り、

その感触が離れていくと、耳元で囁く声が聞こえる。


「ニカを、私だけの、ものに、…ダメ?」



ナナミの声が、
心臓の音が、

響く。


私は戸惑いが隠せない。




「こういうとこ、だよ。」

酷く低い声。

2度目の口づけ。

視界が暗かったのは私が目をつぶってしまったからだと理解した。

2度目のキスは苦しくて、何かドロドロしたものが心の中で渦巻いているようなものだった。

唇が離れる。


キスってこんなに苦しいの…?

なんでそんなに苦しそうなの…



「よしっ。ケーキの続き!」


そう言って、いつものナナミに戻る。
私は頭の中がいろいろなもので混乱しているのに、

あなたの方こそ、私にとっては不思議でたまらない。