2人だけの空間になる。

2人で向かい合うように机を挟み、パイプ椅子に座る。
プラスチックのナイフを使い、何等分かにケーキを分けると、その1切れを私の前にナナミは置いた。

切れ味の悪いナイフだ。
切り分けたケーキの形が少し崩れている。
でもそんなことはどうでも良い。

「ニカ、食べて!」
「うん、いただきます」

私が口にショートケーキを頬張ると、ナナミは私の顔をじーっと見ている。
ケーキの感想がほしいみたい。


「とっても、美味しい」

「やったぁ!!」

私の言葉を聞くと、ナナミもケーキを食べ始める。
「美味しい」と言いながら、どんどん口の中にケーキを入れていく。


「今まで食べたケーキの中で、いちばん美味しい。」


つい、思ったことが口に出てしまった。
ナナミは笑いながら

「お世辞?ありがとう」

と言う。

「お世辞じゃないよ!…本当のことだから」
「分かったよー」

信じてはいないみたい。
本当、なんだけどな……



「今日、ニカの誕生日祝えてよかった」

ナナミはフォークを置き、改まった様子で私を見る。


「心から、人の誕生日祝えたの、はじめてなんだ、だから、私のほうこそ嬉しいなって。思っちゃった。」


言葉の随所に引っかかる。
ナナミは、掴めない。

よく、分からない。