「また何か考えごと?」

「いや、風がただ、気持ち良いなって」

「やっぱりニカ、すごいや」

物思いにふけてしまい、黙ってしまう。
私の悪い癖だ。

でもそれは、ナナミにとってはすごいことらしい。

「今日は何を考えてたの?」
「風…風です」

ふと横を見ると、ナナミは街灯の光に照らされて、儚く綺麗な、何かとは言い表せない何かに見えた。

「不思議。ニカの物の、捉え方?すごく綺麗!」

そんなことない。

私にはあなたの方が、綺麗で、こんなにも輝いて見える。

何でなんだろう。


「私、あたりまえの物に何かを感じたりとか、無いな」

何でまた寂しい顔をするの…

ナナミには私には言えない何かがある。
ずっと悟ってる。


「じゃあ、私こっちだから!」

手を振り、去っていく…




タッタッタッ………




「ナナミ。」

今、今、今、



何でかは分からないけど、





「ナナミは、綺麗、だよ…」




私はナナミの左手を掴んだ。

ナナミが振り返る。

目と目が合う。


無意識で口が動く。



「あ、ははっ…」


ナナミなのに、いつもと違う…

何か違う感情が、ナナミの中にあることに気づいた。