新学期早々、送迎用の車が壊れてしまうなんて。

今日はついていない。

タクシー代を貰ったけれど、タクシーがつかまらない。
学校に行くのに歩くのなんて、初めて。

お手伝いさんも今日は人数が少ないから、あてにならない。


まだ肌寒い春。
私は少し黄みのあるアイボリーカラーのカーディガンを、真っ白なセーラー服の上から重ね着する。
お父様に新学年だからと、買っていただいたローファーを履く。

見慣れた大きな門をくぐり抜け、気分が少し落ちながら学校へと向かう。



(綺麗なお花、ですね…)

歩くのは意外と楽しい。

いつも車の中から見える景色の片隅には、こんなに小さくて可愛らしい花が咲いている。

他の生徒は毎日このような景色を見ながら登校している、と思うと少し羨ましくなる。

私はその場にしゃがみこみ、花を眺めた。
春風が少し寒い感じがしてしまうけれど、その風で花の素敵な香りが私の嗅覚に届く。



「大丈夫ですか?」



聞きなれない声。

同じ制服。

見慣れない顔。


「大丈夫…ですか?」

「何がでしょう。」


呼ばれた声の方を振り返ると、1人の少女。
同じ学年に、いたかしら……

「しゃがんでるから、お腹でも痛いのかなーって思って」