「では、こちら座りましょうか。」

2人でバス停の横の小さな椅子に座る。


足元に小さな花が咲いている。
私はじっと見てしまっていた。

「ニカ、花やっぱり好きなの?」

「いえ、でも…」

変でしょうか?


「正直種類など、詳しくはありませんが、心が安らぐんです。…っ」

言葉が詰まる。


「ゆっくりで、いいよ」

「はい。…」

ナナミさんの言葉に、心が落ち着く。


「…父と母と昔、晴れの日に庭園でゆっくりとお茶をする時間が楽しかったんです。…たくさんの植物や花が色鮮やかで、…」

花を見ているだけで、昔のことを思い出してしまう。
このままの関係性でいたかった。

「幸せだった、私の思い出なんです。」


重いでしょう。
昔のことに未練がましく縋って。

おかしいと笑われないか。


「ニカって、きっと心が綺麗なんだね」

ナナミさんの声がにわかに変わった。
あの時ナナミさんから感じた、寂しさ。


なぜ、


「ナナミ!」
「お母さん!」

目の前にやってきたのは、白い軽自動車。
いつも乗っている車より一回り以上小さい。

「お母さん、ニカだよ」
「あらぁ、可愛い子ね!」

ナナミさんのお母さんは、顔がナナミさんにそっくりだった。