「雅が出た舞台が評判でー」
「あの子役誰だって、なぁ!」

我が家の中心にいたのは、妹だった。

私は壊れていたと思う。

高校は入れそうなところを適当に入った。
親の手は絶対借りない。
高校は特待生で学費無料で入学した。
養成所のレッスン代も自分で稼いで払うと決めた。

誰とも話さない。
誰とも関わらない。

私のことは全て私自身で行う。

思っていたのに。





「新人さん、ですか?」

第一印象はとにかく美人。
でも話し方からして、コミュニケーション能力は低そう。
緊張感が伝わりやすい。

『私を、見つけてくれた』

私に話しかけてくる人はいなかった。


待っていたのかもしれない。
この時を。

私は一瞬でこの人に、

須藤 仁香という人に恋をしてしまった。


優しかった。
嫌われ者の私を、みんなと同じように普通に扱ってくれる。


この人だけは、私をちゃんと見てくれる。

そう思っていただけだったのに。



ニカ先輩の目は、いつもあの人を追いかけている。

恋する瞳。

散々色んな人を見てきたんだ。
先輩を知れば知るほど、その人のことを先輩が好きなんだと分かった。