レイさんの左手の薬指には、


「結婚してるんですか?」

「いや、終わったんだ。」

終わった…?


「妻は亡くなったんだ。」


私は何も言えなかった。
下手に何か言ってしまって、レイさんの傷を抉るようなことはしたくなかった。

レイさんはそんな私の様子を気にしてか、語りかけるように話す。


「俺は、後悔してる。今でも麗華さんとのことを後悔しているんだ。…離さなきゃ良かったと、今でも思う時があるんだ。」

約20年経った今でも、若かった頃のあの瞬間への後悔。

「麗華さんのおかげで気づかせてもらえたんだ。だから、妻と最後までいられたことに後悔はないよ。」

指輪を見つめるレイさん。

その目は沢山の苦難を乗り越えて、何かを見つけられた。


そんな目だった。



「きっと君も、何か悩んでいることがあるんじゃないかな?」

レイさんの優しげな顔に、思わず私の目から涙が溢れた。


「もう、いろいろ、疲れたんです…」


普通に憧れて、最後の願いで編入した、極々一般の高校。
馴染めなくて、変わり者扱いされて。
それでもナナミのおかげで学校に通うのが、楽しくなって、