「人通り、多いだろ…俺が泣かせたみたいだろうが…」
「ふふっ、やさしーねーおにーさん…」

明るい振りをして、自分を隠して、今まできっと辛いなんて言ったことがなかったんだろう。

彼女を助けたい。
笑っていてほしい。

俺はこの時、恋をした。


「麗華…」
「レイさ…っ」

どちらからかわからない。
唇が触れる。
どのくらい時間が経ったかわからない。

長い、でも一瞬。


「夢から覚めたくない…」

彼女の目からは、一筋の涙が頬を伝い、そして落ちる。

「いつでも夢を、見に来ていいんだ。」


誰だって心のどこかで分かっていたはずだ。
こんなことは長くは続かない。

ーーーーー





「俺にとっても、夢みたいな時間だったよ。その後もほぼ毎週、来てたんだ…」

もしこの人がお父様だったら、私の運命は変わっていたのかな…
そんなことを思ってしまう。
お母様ももっと幸せに暮らせていたんじゃないか。

「突然ぱたりと来なくなって。連絡先も交換していなかったから、まさか娘さんに会える日がくるなんて思わなかった。」


少しほっとした顔をするレイさんの、すぐ下に視線を向ける。


「気づいちゃったね。」