お母様よりは少し年上のような感じの見た目の男性は、驚きながらも私を一番端のカウンター席に案内した。

バイト終わり、制服姿。
普通だったら未成年はお断りだ。
お手伝いさんからのメールや電話の通知で私のスマホの通知画面はいっぱいになっている。

小さな時、お母様に聞いた、大人な雰囲気。

いつかドラマで見たような、高校生の私にとってとても非現実的な空間だった。


「麗華さんは元気かな?」

"ダンディー"という言葉がしっくりくる、少し長い髪をたばねた男性は私の目の前にいかにもお酒に見える何かを差し出しながら、そう聞いてくる。

私は目の前のグラスに不信感を覚える。

「大丈夫。アルコールないやつだから。」

私の様子に気づいてか、その男性はそう言った。
グラスに入った綺麗な色の飲み物を私は飲んだ。

「…!」

美味しい…

私は目を丸くした。
今まで飲んだことの無い、不思議な味がした。

「気に入ってもらえてよかったよ。」

男性は私の顔を見て満足気にそう言った。
そして何秒か目が合った。


「あの、何か?」

「はははっ…ほんとに麗華さんそっくりだ。」

男性がそう言うと、近くに座っていた年配の男性も私を見て『確かに』と言った。