「話があります」
その日のバイト後、私は美咲に呼び止められた。
スーパーに近い公園のブランコに座った。
私はその日、必要最低限しか話していない。
無駄な会話をせずとにかく業務をこなしていた。
会話を切り出したのは美咲だ。
「最近ずっと上の空じゃないですか?何の話してても、バイト中も。…何か理由があるんですよね?話してくれないとっ…わからないじゃないですか?」
涙ぐみながら話しているのが、美咲の顔を見なくてもわかった。
私だけが苦しんでいるわけじゃない。
私のせいで、周りもこの苦しみに巻き込んでしまっているんだ。
美咲は私と"志崎さん"が付き合っていたことは知らない。
このことは、美咲には関係ないはずなんだ。
私は美咲にしっかり向き合わないといけないんだ。
「ごめん。心配かけて。ごめんね。」
私は座っていたブランコから降り、後ろから美咲を抱きしめた。
「ニカ先輩には、私の隣で笑っていてほしいんです。」
「うん。私も、美咲と笑っていたいな…」
次に進まなければ、
頭では分かっている。
頭で理解出来ても、本心では全く理解出来ていなかった。
きっと時間が解決してくれる。
そんな安直な考えを、今は信じて、美咲の近くにいると決めた。