「いろんな部活回ってみたから、その内、栞が入りたい部活に入ればいいしね。お父さん」
 母はにっこりとして、いすに座っていた父に言った。
「……まぁ、いいじゃないのか、栞は栞のペースで」
 父は新聞を見ながら、声を発した。
 私はうんと返事をして、笑った。
 夕飯の準備を母がしているので私は台所まで行き、おかずが載っている皿を運んだ。
「これで全部だよね。じゃあ、いただきます」
 皿を運び終えると、私はまたいすに座り、両手をあわせた。
「いただきます!」
 両親も手をあわせてから、箸を持った。
「おいしい~、これなにこれ」
「おいしいでしょ。朝から大根とか煮込んでたからしみ込んで美味しくなったの」
 母は親指を立って、最高でしょと言ってきた。
「最高!」
 私はグッと親指を立って、明るい声で発した。
 お腹がすいていたので、かぶりつくように食べた。父は私のこと見て、にっこりとした。
 私は部屋に行って、学校の準備をした。
 来週の月曜日まで部活動の入部届を出さないといけないし、やることが多い。
 授業は小学校よりもはるかに難しくなっていて、予習・復習しないとついていけない。大丈夫、大丈夫。私ならできる。自分自身を励ました。
 翌日
「いってきます」
 私は玄関を出て、母に手を振ってから学校に向かった。
 はぁー、ため息しかでない。本当は学校に行くのは私にとって、せまい空間でしかない。心の中で呪文を唱える。大丈夫、大丈夫。出来る! 出来る!
 私は一歩ずつ歩きながら、唱え続けた。そしたら、学校の下駄箱まで着いた。
 自分の靴箱を開けて、上靴にはきかえる。
「おはよう」
 声をかけてきたのは、沙耶だ。
「…おはよう」
 私は目線を逸らして、靴をはいて、言う。
「なになに、どうしたの?」
 私に心配そうに沙耶は聞いてきた。
「なにもないよ」