「栞。一年生の中でどういう役割だと思う?」
 桃は突然私に聞いてきた。私は一年生との関わりを思い出した。
 ある日、恵子は私が持っていた手帳を持っていき、私は返して! と何回も言っているのに返してくれなかった。
 恵子は走り出しながら手帳を開き始めて、手帳に書いているものを声に出していた。
「…五月二十四日にすべての恋が始まるのドラマが始まる」
「やめて! 何してんの!」
 平然とした顔で私の手帳を持っていたことなんて、悪気がないように…
 誰かをからかいたいのか分からないが、私をよくいじってくる。
「なにしてんの?」
 ミカが私に声をかけてきた。
「手帳…奪われた」
「…それして楽しいのか」
 ミカは正論を言い放った。桃はため息をついていた。夏海とさあやは立ち、見ていた。私は逆に辛かった。バカにされているのかと思うと、自分の心が苦しくなる。
「違うよ。栞がいるのといないのは雰囲気違うんだ」
 桃は首を振っていた。
「…恵子は私のことバカにしてるのに、なんで辞めないでほしいって。バカにするやつがいないから?」
 恵子は私に悪いと思っていないのか、いつも笑っていた。どうしても許せなかった。
「…栞。それは違う。恵子は仲良くしたいんだよ」
 黙って見ていたさあやが口を開く。私はなんで分かるの? とさあやに聞いた。
「幼馴染だから分かるし。あんたをいじめようとはしていない。仲良くしたいそれだけ」
 さあやは私の名前を呼んだことなかったが、今日初めて呼ばれた。
「…恵子の愛情表現なんでしょ? 恵子」
 夏海はねぇ? と首を傾げて、近くにいる恵子に話しかけた。
「…………違うから」
 恵子は照れくさそうにしていた。
「素直じゃないんだよな」
 桃は両腕を組んでから、恵子の方を見た。
「…そうだよ、そう! 仲良くなりたかったの」