恵美はラケット交換の時、築先輩になにかを言われていた。
 その一言に目を開いて、驚いていた。
 私はどうしたんだろうとポツリと呟いて、試合を見た。
「…築が精神的にやられる言葉をかけたんだ。いつも試合になると一変する。今回は違う。それを打ち返すメンタルがあるかどうかでこの試合勝つかどうか決まる…」
 長谷先輩の言葉は正しかった。築先輩は恵美に負けていた。
 そんな時、長谷先輩は大きい声で叫んだ。
「…築! お前は強い。お前自身が分かってんだろ」
 長谷先輩は築先輩のことを分かっているからこそ言っているのだろう。
「築! そうよ、長谷の言う通りよ! 築なら出来るから!」
 七海先輩はタオルを振り回して、いけーと大きい声で叫んで、見つめていた。
 築先輩は同級生に励まされて、その様子を見て、目から涙が少し出ていた。
 力強くラケットを握りしめて、相手に負けないように打ち返していた。
 一セットは相手が勝った。二セット目から築先輩は迷うことなく、前を向いて戦った。二セットと三セット目は築先輩が勝利を収めた。
 相手は悔しそうにしていたが、築先輩は相手である恵美に言い放つ。
「…私は……あの時の私じゃない。あなたに負けるわけがない!」
 築先輩は目を見開いた瞳で恵美に言う。築先輩は勝って、花音先輩は負けた。
 ダブルスは時間がかかっているようで、どっちが勝ってもよさそうだった。
 お互いの中学校同士で大きい声を出して、応援した。
 相手がボールを返したら、上まであがったのを見て、類先輩が打ち返した。
 卓球台にボールがあたり、得点を取った。一点を取ったことで私たちの中学校が勝った。
「勝った!!」
 先生はガッツポーズをして、嬉しそうに言った。
 両手を上にあげて、メンバーと共に抱きしめて喜んだ。