涙がこぼれそうになったその時、新たにパスを求める声が乱入してきた。

もう終わりだ……と絶望したけれど、どこか気だるげな声色は聞き覚えがあって。



「よし、奪還成功」



髪飾りが飛んでいったほうを向いたら、上下黒い服に身を包んだ男の子が立っていた。



「あの、その子から離れてもらえませんか?」

「はぁ⁉ なんだよお前! 仲間のふりして邪魔しやがって!」

「騙すなんて卑怯だぞ!」



突如現れた乱入者に大激怒した彼ら。今にも殴りそうな勢いで乃木くんへ近づいていく。

だけど、乃木くんは逃げも隠れもせず、帽子のつばをクイッと上げて……。



「卑怯? 人の大切な物を奪ったあげく、4人がかりで追い詰めるあなた達のほうがよっぽど卑怯だと思いますけど」



ドスの利いた声で言い返し、鋭い眼光で睨みつけた。

威圧感溢れるその姿は、まさに一触即発。

最初は逆上していた彼らも、身の危険を感じたのか、尻尾を巻いて逃げていった。



「良かった、間に合って」