バカだな私。こんなにも特徴に当てはまる人が近くにいたのに。どうして気づかなかったんだろう。


あの時、乃木くんはずっとうつむいていた。

彼の性格上、単に説明するのが面倒だったからとも考えられる。だけど、それなら長引く前にハッキリと答えるはず。

なのに沈黙を貫いていたということは……。


駐車場の前で立ち止まり、割烹着のポケットに手を入れる。


応援するなら、せめて髪型だけでもオシャレにしようと思って持ってきたけど……もう、必要なかったか。



「あれれ〜? 皆吉?」



桜の髪飾りをしまおうとした瞬間、誰かが私の名前を呼んだ。



「なんでこんなとこにいんのー? ってか若作りはどした?」



茶髪に主張の強いネオンカラーの服。
首元には、重ねづけされた複数のネックレス。

振り向くと、1番会いたくなかった人が友人を連れてやってきた。



「若作り? 何の話?」

「こないだバッタリ会ってさ。浴衣買ってたんだよ。花柄のすっげー可愛いやつ」

「マジ? この顔で? 度胸あるなぁ。俺だったら絶対無理」

「俺も。逆に地味顔が引き立ちそうじゃね?」