ありがとう。お母さんからの入学祝いなんだ。
そう返したいけど……。



「ほら、皆吉さん困ってるから。つーか何してたんだよ」

「別に。ただの世間話よ」

「世間話ぃ? 本当に? 怪しい話でも持ちかけてたんじゃねーだろうなぁ?」

「皆吉さん、私も1個ください!」

「はいっ。ありがとうございます」

「おい、無視すんなよ」



目の前で口論が繰り広げられる中、せっせと作業に取り組む。


学校の時と変わらず、平常運転の2人。

ただ……1つ違うのは、千葉さんが頑なに彼と目を合わせようとしないところ。



「いい加減にしろ。何企んでんだよ。まさか、密会⁉」

「はぁぁ⁉ な、なに言ってんのよ!」



しびれを切らした彼が顔を覗き込んだ。


途端に赤くなる頬と耳。そして泳ぐ目。

──あぁ……そういうこと。



「千葉さん、ごめん。割り箸のストックがなくなってたからちょっと取ってくるね」



早口で言い残し、テントを抜け出した。