「こんばんは。焼きそば1つください」



エプロンを入れたトートバッグに手を伸ばそうとしたが、注文が入ってしまった。

助けを求めようと隣を見るも、2人は焼きそばを作る父に夢中。


うぅ、仕方ない。ここは我慢するか……。



「ありがとうございます。見張り、バレちゃったの?」

「うん。イベント観に行った時に見つかってさ」



はははっと笑う手島くんの服装に目を移す。


黄色いアロハシャツに淡いブルーのデニムパンツ。

夜道対策で選んだのかもしれないけど、見つからないのが逆におかしい組み合わせだよ。

なんて、そんな私は全然気づかなかったんだけどね……。



「そっか。ちなみに、その荷物は……?」

「あぁ、これは、浴衣の天使達に連れ回されて」



苦笑いでビニール袋を見せてきた。


右は焼き鳥とベビーカステラ。
左はイカ焼きとポン菓子、お好み焼き。

どうやら荷物持ちを頼まれたらしい。



「大変だね……。乃木くんと千葉さんはいないの?」

「あー、それが途中まで一緒だったんだけど、なんか用事があるからって、2人でどっか行っちゃった」