顔を覗き込まれ、至近距離で目が合った。
体が硬直すると同時に心臓が大きく鳴り始める。



「ううん。汗かきすぎて疲れただけ。もう大丈夫」

「そう? 良かったー」



柔らかな笑顔を向けられて、今度は顔が熱くなっていく。


私ってば、なにドキドキしてるの。
乃木くんは先生に言われて来ただけなのに。

そもそもよく考えたら、校内トップレベルのイケメンが、校内ワーストレベルの地味女に用事なんてあるわけないじゃない。



「暑い時は途中で休憩挟んだほうがいいよ。皆吉さん、暇さえあればいつも勉強してるからさ。せっかく登校しても、悪化して授業休むってなったら、それこそ辛いだろうし」



強く言い聞かせるも、胸の高鳴りは収まらず。


勉強してること、知ってたんだ。

寝てばっかりでクラスメイトと全然つるまないから、あまり人に興味がないのかなと思ってた。


面倒くさがり屋さんだけど、意外と周りを観察しているタイプだったり?

それとも……実は寝てるふりしててこっそり見てたとか⁉



「あっ、ごめん。バス通学の人間が偉そうに……」

「ううん! こっちこそ心配かけてごめんね。次からは気をつけるね」