日が高くなり、私達は比較的涼しい水辺に場所を変えることにした。
 今は静かな泉の周りにも魔族たちとの争いの跡がいたるところに残っていて再び気分が落ち込みかけたとき、エルが溜息交じりにぼやいた。

「それにしてもコハルは酷いなぁ、折角お守りだよって贈ったのに仕舞ったまま置いていっちゃうんだもんなぁ」
「! そ、それは、」
「わかるよ、竜帝くんに見られたら不味いのは。でもこの子が気を利かせてくれなければ今頃」
「そうなのエル! リューが大変なことに……!」

 なんだか誤魔化すようなタイミングになってしまったけれど、エルは優しく頷いてくれた。

「うん、僕も見ていたよ。……竜帝くん、完全に怒りに我を忘れていたね」

 言いながら、彼は泉の水面を見つめた。
 ――そうだ、あのとき眠っていたメリーを起こしたのがエルなら、リューが竜の姿に変貌していくところも間近で見ていたはずなのだ。

 私は声を潜め続ける。

「それに魔族が、魔王が復活するって……」

 この話もきっとブローチを通して聞いていたはず。