「エル……?」

 ――なんでエル……妖精王エルフェイツィー様がここにいるのだろう。
 ブローチはないのに。
 ここは『妖精の国』から遠く離れた『砂漠の国』なのに。

 夢? それとも、幻だろうか?

「妖精王様!?」
「え、妖精王って、あの妖精王?」

 でも、ローサの素っ頓狂な声に続いてカネラ王子の声が聞こえて、彼女たちにも見えているのなら夢や幻ではないと確信する。

 なぜかはわからないけれど、エルが本当に来てくれたのだ……!

「全然呼んでくれないんだもんなぁ。もっと気軽に頼ってくれていいのに」

 そんなようなことをぼやいているエルに、私は縋りつくようにメリーを差し出した。

「エル! お願い、メリーを助けて! 癒しの魔法をいっぱい使って、そしたら急にこんなにぐったりしちゃって、私どうすればいいか」
「大丈夫」
「え?」

 エルは翡翠の瞳を細め綺麗に笑っていた。

「大丈夫だよ。ちょっと力を使い過ぎて深い眠りに入っちゃっただけ」
「深い、眠りに?」

 エルが笑顔で頷く。