そのままむくりと起き上がったお父さんは震える手で真っ赤に染まった己の胸に手を触れた。

「痛みがない……傷が、治ってる?」
「っ、お父さん!」

 男の子が感極まった様子でお父さんに抱きつくと、周囲でワっと歓声が沸き起こった。

「良かったぁ! 聖女様が魔法で治してくれたんだよ!」
「ううん、私じゃなくて、この子のお陰。妖精のメリーっていうの」
「ありがとうございます、メリー様!」

 男の子とお父さんからもお礼を言われて、メリーは満更でもないような顔をしていた。



 それからメリーは何人も続けて癒しの魔法をかけて回ってくれた。
 クレマ王子が負傷者の様子を詳しく伝えてくれたお蔭で、重傷の人優先で治してあげることが出来た。

 でも、10人を超えた頃だろうか。傷が治って喜ぶ人々を背に私の元へ戻ってくる途中でメリーの身体がふらっと傾いたのを見て、私は慌てて手を伸ばした。
 そのまま私の腕の中にくたりと身を預けたメリーを見て、サっと血の気が引く。