か細い声が聞こえて見れば、小さな男の子が立ち上がっていた。
その子の足元には胸から腹にかけて包帯を巻いた男性がぐったりとした様子で寝ていて。
今にも泣きそうな顔で男の子は続ける。
「傷が深くて、このままでは死んでしまうと……聖女様、どうかお父さんを助けてください!」
それが皮切りとなった。
「聖女様! うちの人もお願いします!」
「うちの息子も……!」
「聖女様! どうか、助けてください!!」
「お願いします!」
口々に、皆が私に助けを求めた。
なのに私は何も言えなかった。
何も、答えられなかった。
だって私にそんな力はない。
『聖女』なんて立派な名前なのに、私に治癒の力はない。
私がこの異世界で授かったのは魔物を倒すために特化した力。ただそれだけだ。
それでも、人々の助けを求める声は鳴りやまない。
「聖女様!!」
私はゆっくりと口を開く。
「……ごめんなさい、私には」
「メリーが癒しの魔法をかけますか?」
「え?」
つぶらな瞳が私をじっと見上げていた。
「メリーの魔法なら、皆を助けられると思います」