それから私たちは、街の皆を元気付けて欲しいとクレマ王子に頼まれ、先ほど彼が出てきた街で一番大きく立派な建物に足を踏み入れた。
 普段ここは街の集会場として使用されていて、今は多くの人がこの中で手当てを受けているのだそうだ。

「大丈夫? 聖女サマ」
「え?」

 廊下を歩きながら前を行くカネラ王子に訊かれ、思わず呆けた声が出てしまった。

「顔色悪いから」
「だ、大丈夫です」

 顔を引き締め答えると、カネラ王子は「そ?」と短く言ってすぐに前に向き直った。

(カネラ王子にまで心配されるなんて……)

 私は今そんなに酷い顔をしているだろうか。

 ――魔王が復活すると聞いて、あのときの光景が一気にフラッシュバックした。
 あのとき、最後に見た魔王の姿が……。

 軽く頭を振って深呼吸をする。
 元々私は魔族たちの調査、ひいては魔王の復活を阻止するためにこの国に来たのだ。
 少し予定とはズレてリューを追いかけてここまでやって来たけれど、魔族たちのことは一度ちゃんと調査をする必要がありそうだ。