――覚えていろ――

 この世の全ての恨みつらみがこもったような悍ましい声。

  ――必ず……必ずオマエを――

 この世の全ての怒り憎しみがこもったような恐ろしい眼。


 私はそれを、ただ呆然と見ていた。


「コハルさま?」
「!」

 可愛らしい声にハっとして視線を落とすと、つぶらな瞳が私を心配そうに見上げていた。

「大丈夫ですか? コハル様」
「あ……」

 続けてローサにも訊かれ大丈夫と答えようとしたけれど、喉に何かつかえたように声が出なくて。

「聖女様?」

 クレマ王子も膝を着いたままこちらを不安そうに見上げていて。
 私はこくりと生唾を飲み込み、なんとか笑顔を作った。

「も、勿論です。もし本当に魔王が復活するというなら、聖女として出来る限りのことは」

 その声は少し震えてしまっていたかもしれないけれど。
 それでも「ありがとうございます」ともう一度頭を下げられて、私はドクドクと低く響いている胸を押さえた。