兄弟ならば、そのことは知っているはずで。
 クレマ王子はこのタイミングで現れたカネラ王子を疑っているのだ。
 カネラ王子もきっとそのことに気付いている。

「彼女たちを案内していて、この街に立ち寄った」

 淡々と、彼は弟の問いに答えた。
 その表情は普段の彼と何も変わらないように見えたけれど――。

「案内?」

 そうして、クレマ王子の視線が私たちに移った。

「この者らは?」
「聖女サマと、その従者」

 そう紹介された私は慌てて姿勢を正し頭を下げる。

「初めまして。佐久良小春と申します。あの、カネラ王子には砂漠の道案内をお願いしていまして」
「聖女、様……?」

 私を見つめるその瞳がみるみる大きくなっていったかと思うと、彼はいきなりその場に膝を着き勢いよく頭を下げた。

「聖女様、お願いします!」
「えぇ!?」

 突然のことに驚く私に、彼は大声で言った。

「この街を、いえ、この国をお救いください!」
「え、えっと」
「魔族たちが、叫んでいたのです」
「え?」

 そして、彼は口に出すのも恐ろしいという様子で続けた。

「魔王が、再び復活すると」
「!?」

 ――魔王が、復活?